昔、メーカー製PCアップグレード用マザーボードというジャンルがありました。
1990年代、パソコンは高価で、安くても20万円ぐらいしました。高いお金を払って購入し、頑張って勉強してパソコンの使い方を学びましたから、自然と愛着も湧きました。
だから型落ちしてもおいそれと買い換えることはせず、HDDを増設し、メモリを増設し、拡張カードを増設し、CPUを交換し、少しずつ数万円単位のお金をかけてアップグレードするのが普通でした。マザーボードや筐体もアップグレードが前提の作りになっていましたし、当時はCPUソケットの互換性が今よりはるかに豊富でした。例えばSocket7 Pentium 133MHzのパソコンならK6-III+ 600MHzまで、Slot1 Pentium II 400MHzのパソコンならCeleron 1.4GHzまでアップグレード可能でした。CPUクロックだけでも4倍程度は高速化することができ、投資効果を十分に体感することが可能でした。
ところが1995年Windows 95発売以前の、486世代のパソコンはアップグレードの幅が限られました。Socket3マザーボードのアップグレードパスは、Pentium OverDrive 83MHzかAMD Am5x86-P75 133MHz(Pentium 75MHz相当)に限られました。どんなにアップグレードしてもWindows 98が限界でした。
Pentium世代のマザーボードも600MHz以上にはアップグレードできず、PC-9800シリーズは勿論、PC/AT互換機のマザーボードもATX規格は殆どなく、多くが特殊形状のLPX規格で、自作用マザーボードに交換することも不可能でした。そのままではWindows XP以降のOSを使うことがほぼ不可能でした。
そこで、これらを解決するためのニッチな市場として、メーカー製PCアップグレード用マザーボードというジャンルが存在しました。大きく分けて以下2種類が存在しました。
1. マザーボード交換型(主にLPX規格のマザーボード)
2. 拡張スロット増設型(ISAバス用の
PL-Renaissance/AT、
PL-Renaissance/370SやCバス用の
PL-Renaissance/98)
FMVデスクトップ向けはマザーボード交換型が主流でした。
アイデクソン中央のレスキューシリーズIXPII-2000に含まれていた
DTK PRM-0061iラステーム・システムズのアップグレードマザーボードUG370に含まれていた
Unicorn ENDAT-370MLなどが有名です。
いずれも
元の筐体に大幅な改造を加えないのが大前提でした。
「IBM Aptivaを最新ハードで生まれ変わらせたユーザー出現、フロッピーはなんと118GBに」のように、原形をとどめないほど改造してATX規格のマザーボードを搭載することはアップグレードとみなされませんでした。
それから15年。さて、今はどうなのか。1995年前後の旧式パソコンを、できるだけ原形を維持したまま“アップグレード”して使い続けることはできないのか。
自作用マザーボードはATX規格とその派生型Micro ATXやMini-ITXが主流です。
Baby AT規格はPentium 4の頃に、NLX規格はPentium IIIの頃に滅びたようです。
ではLPX規格はどうなのか。なんと、産業用の分野でPOS端末用として細々と残っていました!!
Shenzhen NORCO Intelligent Technology 华北工控
http://www.norco-group.com/POS-7933 (LGA1155 / Intel Q67)
POS-7893 (LGA775 / Intel G41)
POS-7853 (LGA775 / Intel 945G)
POS-7713 (Socket478 / Intel 845GV)
Evoc Intelligent Technology 研祥智能
http://www.evoc.cn/POS-1811LNA (LGA775 / Intel 945G)
POS-1711VNA (Socket478 / Intel 845GV)
ライザーカードに電気的な互換性はありませんが、分かっている人が見れば、マザーボードの形状に物理的な互換性があるのが分かります。
本当はPOS-7933が欲しかったのですが、私のような一個人が入手するのは困難でした。
代わりにPOS-7853が手に入ったので、これからレポートします。